この作品との出会いは、本屋さんの店頭でたまたま見かけた事でした。
巫女服に身を包んだ「ザ・エルフ」なキャラクターが、困り笑顔で携帯ゲーム機を持っている表紙に興味がわき、おもわずジャケ買いしたのです。
いざ読んでみると、江戸時代の文化にも現代のサブカルにも興味があるかえるにとって、とてもとても刺さる作品でした。
2023年6月にはアニメ化もされ、小清水亜美さんの演じるエルダは、とても魅力的でした。
海外でも「Otaku Elf」というタイトルで、ファンが多い作品です。
残念ながら第2期制作の発表は、まだ無いようです(2024年12月現在)。
そしてなんとこちらのサイト(たくさん読める講談社のマンガWEB コミックDAYS)で、第1~3話と直近3話が無料で読めます!
あらすじ
東京中央区月島、江戸時代より400年以上の歴史を刻む「高耳神社」。
そこに祀られたるご神体は、異世界から召喚されたエルフのエルダでした。
すっかり引きこもり、ゲームにアニメにフィギュアにと自堕落な生活を送るエルダに使える巫女は、女子高生の小岩井小糸(こいわい こいと)。
ポンコツエルフと背伸びしがちな女子高生の、下町ライフの始まりです。(第1巻裏表紙より)
第1巻レビュー
第1話 #1 東京のエルフのハナシ #2 氏子のみなさんのこと #3 東京都私たちのいまむかし
主人公のエルダと小糸との掛け合いが、とてもリズムよく楽しく展開されます。
お仕事である神事を全力で嫌がるエルダと、お仕事を全うしようとする小糸。このせめぎ合いが、毎日繰り返されていることが容易に想像されますね。
あるものが奉納されたことで、エルダは思わず涙をこぼしてしまいます。小糸は思わずドン引きでしたが、かえるは爆笑してしましました。
その奉納されたものは、いったい何でしょうか?
涙はうれし泣きなのか、悔し泣きなのか、ぜひ確かめてください。
小糸の心の中には10年間、忘れられない謎の女性『憧れの白い女(ひと)』の存在がある事も描かれます。
その謎の女性の正体が解明するまでのストーリーが、今後の重要な要素になるかと思ったのですが、第1話であっさりと明かされたのは意外でした。まぁ、誰が読んでも分かりやすいのですが…。
第2話 #4 江戸前エルフと知らないこ #5 ぼくらのソウルフード戦争 #6 いこうぜもんじゃストリート
2人の主人公に続いて、小糸のいもうと小柚子(こゆず)が登場。
体を動かすのが得意な小糸とは対照的に、小柚子は料理がとても得意です。毎日エルダが美味しく食べていたご飯も、彼女が作っていました。
そして、エルダと小糸の間で急に勃発した「月島のソウルフードは○○だ!」論争に決着をつけるべく、月島もんじゃストリートに3人で繰り出します。「新旧ソウルフード対決」その決着をぜひぜひ見届けてくださいね。
餅めんたいチーズもんじゃ、クラムチャウダーもんじゃなど、次々に美味しそうなもんじゃが登場します。
やっぱりもんじゃが食べたくなってしまいました。お腹がすいているときには、かなり酷なお話ですね。
3人が行ったもんじゃ屋さんの店内がガラガラなのが気になったのですが、その理由が実はアニメ版で説明されていました。氏子の皆さんは本当に、エルダに優しいですね(小糸曰く「甘やかしすぎじゃないですかー!?」)。
第3話 #7 1/3の純情な欲望 #8 I’m lovin’it #9 江戸前エルフと江戸っ子少女
小糸は幼なじみの コマちゃん(桜庭 高麗)と、学校帰りにファストフード店に立ち寄り、ひとりで3人分の「ラッキーセット」を平らげてしまいます。「エルダがこのおまけを集めているから、それを手伝っているだけ」と言い訳しますが、コマちゃんからはグサリと「言い訳しても太るもんは太る」と言われてしまします。
その後2人でエルダに会いに行った際、エルダに対してもあるコトバで敵対心を持たれてしまいます。
コマちゃんは、かなりストレートな物言いをするキャラクターです。それはともすれば敵を多く作ってしまう要素ですが、小糸からは心から信頼されていますし、エルダからも「な、なんかコマちゃんは、イケメンだな…」と評される具合です。コトバにウラオモテがないコマちゃんのイケメンプっぷりは、確かにかなりのモノですね。
食玩あつめが趣味なエルダ。今ハマっているのは「カエルせんしゃ」シリーズ。
最新シリーズはブラインドBOXで全3種類。BOX買いすれば全種揃うけれど、1BOX8個入。
高耳神社のご神体たるエルダ(神通力なし)は、あえて3個しか買わないリスキーチャレンジをします。
はたして、ダブりなしのコンプリートは出来るのか!って、言っている時点で結果は分かりますよね…。
かえるも食玩などのおまけ集めが大好きですので、とてもエルダに共感出来ました。いままでで、ブラインド5種類を5個買ってフルコンプ出来たことが1回だけありました。あの時は興奮したな~…。それ以外はダブりまくりです。
第4話 #10 JK巫女と継承の儀 #11 江戸前エルフとJK巫女 #12 GO EAST!
小糸が巫女として継承の儀をとり行います。
時刻は深夜2時。服装や吐く息が白いことから、冬なのは間違いなさそうです。
当然エルダは文句タラタラ、体もガクブル。今回はさすがに、ちょっと小糸が厳しすぎるかな~と思いました。
予想通り何重にも着ていたダウンやジャケット・マフラーをはぎ取られた時のエルダのセリフが最高でした。
「寒い!!!しぬ!!!不死身だけど○○○がしぬ!!!○○が!!!氷のように冷たいから!!!」
もしかしたら、エルフの最大の弱点かもしれません。エルフは寒さも感じない説も、あるようですが。
そんなエルダでしたが、急にキリッとして儀式に向き合います。
電気の明かりは一切ない月島を、提灯の明かりだけを頼りに一周する。それが継承の儀です。
氏子たちは、唄を歌いながらそれを見守ります。このシーンはとても幻想的で、胸が温かくなりました。
が、儀式の終わりになぜエルダがキリッとしたか、その理由が判明します!
「やっぱりみなさん、エルダを甘やかしすぎじゃないですかーーー!?」小糸の絶叫が深夜の月島に響き渡ります。
かえるは寒いのはそんなに苦では無いのですが、寒すぎるのはやっぱり体に堪えます。
でも、寒いからこそ美味しい食べ物も沢山ありますよね。
エルダたちが最後に食べたものも、寒いからこそ一層美味しく感じま。こたつに入りながらのチョット高級アイスが、その対極でしょうか?バイトの帰りに友達たちと、同じことをした記憶がよみがえりました。
高耳神社のモデルになった神社は?
築地に「波除(なみよけ)神社」という神社があり、そのご本社が作中の高耳神社によく似ているとも。
西暦1600年代なかごろから航海安全や災難除け・厄除けなどの神として人々に篤く信仰されてきたそうです。
しかし、作者の樋口彰彦先生曰く「特定のモデルの神社はございませんでございます」とのことでした。
エルダ先生が教える「江戸文化」
佃煮の由来
佃一丁目の中心部(1番~10番街区)は、江戸時代に埋め立て造成された「佃島」が原形となっています。当地は、江戸幕府設立に当たり、徳川家康の命により摂津国(せっつのくに)西成郡(現在の大阪市西淀川区)在住の漁師たちがを江戸に住まわせ、正保元年(1644)に幕府から拝領した鉄砲洲(現在の湊・明石町)沖の干潟100間(約181メートル)四方を埋め立てて築きました。
そこに住む漁師たちが船内食・保存食にするために作り出したのが、佃煮だと言われています。
*参照・画像引用元:一般社団法人 和のたしな美塾 様(佃島の歴史2〜「佃島」の誕生〜 | 一般社団法人 和のたしな美塾)
もんじゃ(もんじやき)の由来
「もんじゃ焼き」の名前の由来は「もんじやき(文字焼き)」が訛って「もんじゃ焼き」になったといわれています。「もんじやき(文字焼き)」は戯れに熱した銅板にタネで文字を書いて、子供達に文字を教えたり遊んだりしたのがはじまりとされています。「もじ」が「もんじ」と変わり、「もんじ」が「もんじゃ」へと変化していったと考えられています。
*参照・画像引用元:にっぽんの郷土料理観光事典 様(【もんじゃ焼き】とは?由来・発祥は?起源と歴史、作り方を解説 | にっぽんの郷土料理観光事典)
引札(ひきふだ)の歴史
江戸時代の広告のこと。”お客様を引く札”だから引札。
引札の誕生は、「広告」という言葉がまだなかった江戸時代前期、天和3年(1683)までさかのぼります。呉服屋の三井越後屋(三越の前身)が、「現金安売り掛値なし」=値札通りの現金さえあれば誰にでも商品を売るという、当時としては画期的な商法(それまでは一見の客には売らず、値段交渉も必要だった)を謳い文句にした一枚物の摺物(すりもの)を配り大変な反響を呼びました。
*参照・画像引用元:東京都立図書館 様(引札〜印刷広告の元祖|東京都立図書館)
江戸時代の提灯の役割
提灯は、江戸時代に入り、和ろうそくの生産が奨励されたことによって、以前よりは手軽にろうそくが手に入るようになったことから、日常の照明器具として広く普及しました。
それに伴い、夜に提灯をもって出歩く人が増えていくことになりました。その際、自分の身元を明かしたり宣伝・看板として家紋や屋号を書くようになりました。洒落好きな江戸っ子は、家紋や屋号のほかにも「今晩(こんばん)」「一寸用足し(ちょっとようたし)」などと、描くことが流行り提灯を持つこと自体も楽しむようになりました。
エルダの提灯にも「ヒトコト」が当然描いてあるのですが、何と描いてあったのか是非読んで確かめてください!
*参照・画像引用元:豊島区伝統工芸保存会 様(江戸提灯 – 豊島区伝統工芸保存会)
江戸前エルフ第1巻の感想とおすすめポイント
キャラクターがカワイイ
長身・金髪で、猫背を直せばトップモデル並みに美しいエルダ。
そんなエルダがまぁるい顔と三頭身キャラになる時があります。その姿を「エル堕サマ」と(勝手に)名付けましょうか。
推しキャラクターに「フスフスフス」と萌えたり、ダラダラと怠惰な時間をむさぼる時がその時です。
その姿が無性にかわいく、同じオタクとして共感もできる瞬間でもあります。
永遠と刹那が交わる特異点としてのエルダ
高耳神社の氏子さんたちはエルダを、「変わらないモノ」の象徴として慕っています。
目まぐるしく変化していく環境に、ともすれば自分を見失ってしまう事もあるでしょう。そんな中、例えば富士山のように昔から変わらない存在から得られる安心感。
懐かしい子供時代を思い出したり、今はいないあの人に思いをはせる切っ掛けに成ったりもします。
一方、永遠の命を持つエルダ本人は、数えきれないほどの別れを経験し、深く傷ついてもいる事が伝わります。特に人間と絆を深めることに躊躇するシーンがあります。それがこの作品の奥底に「切なさ(刹那さ)」を漂わせ、独特の雰囲気が特徴です。
それでもなお、400年前のある友達との約束を守り続けるエルダに、小糸がかけるコトバが一層胸に染み入ります。
エルダは不変なのか?
永遠の命を持ち「変わらないモノ」の象徴、エルダ。
しかし、エルダだってどんどん変わっています。それは「成長」と言い換えられるでしょうか。
TVゲーム、VR、プラモデルを楽しむし、インターネット、宅急便を使いこなし、新たな推しコンテンツを発掘し、現代版もんじゃの美味しさに身もだえます。
江戸前エルフのおすすめポイント
作中では「変わる」は「続いていく」と表現されます。
江戸時代の人も、小糸のお母さん(小夜子:さよこ)も、今はもう居ない。
居なくなってしまったら、無くなってしまったのか?
いえ、「続いて、居ます」。
江戸時代のもんじゃはスタイルを変え、今でも沢山の人を楽しませています。
小夜子も亡くなってしまいましたが、今日、小糸が16歳となり巫女職を引き継ぎました。
エルダや小糸たちの賑やかな成長を通して、変化して引き継がれてきたモノやコトを楽しめる、そんな魅力のある作品です。
最後まで読んで下さり、ありがとうございました。
*参照・画像引用元まとめ
・一般社団法人 和のたしな美塾 様(佃島の歴史2〜「佃島」の誕生〜 | 一般社団法人 和のたしな美塾)
・にっぽんの郷土料理観光事典 様(【もんじゃ焼き】とは?由来・発祥は?起源と歴史、作り方を解説 | にっぽんの郷土料理観光事典)
・東京都立図書館 様(引札〜印刷広告の元祖|東京都立図書館)
・豊島区伝統工芸保存会 様(江戸提灯 – 豊島区伝統工芸保存会)
コメント